2010年6月12日土曜日

open source productに関する僕の考え

  • 僕とNOSIGNERさんの前提条件の違い
僕の考えでは、職人の地位向上を狙うなら、ユーザにその価値を理解してもらう必要があり、売っているデザインを見てユーザが職人技かそうでないかの違いを見抜く目をもっていないといけない。でも、それは難しいはず。職人の価値を認めてもらいたいなら、デザイナーだけでなく、経営者やユーザにも職人技の価値が届かないといけない。NOSIGNERさんは、職人のお給料が良くない現実を、まずは職人の技の価値をオープンにすることでデザイナーたちに認めさせようとしている。それはとても現実的なアプローチだと思う。
  • 僕が考える問題点
たぶん、イタリアでは一人一人の人間がいいデザインか悪いデザインかを見抜く目をもっていて、だからこそ3000万円の年収をもらう職人もいたりする。職人技をオープンにすることで、デザイナーにとっては価値が向上するだろうけど、そこから先が今のやり方と変わらないのでは、職人の地位向上も長続きさせるのは、難しいはず。具体的には、ユーザのデザインに対する考え方を変えることをしないとデザインのソースをオープンにしても難しいんじゃないかなというのが、僕の考え。Linux等のオープンソースが普及した背景には、安価で即利用可能というのがあって、職人がまねできない技をいくら公開しても、一般ユーザのデザインに対するリテラシーは向上しない。まとめると、マネしたいと思うかっこいいデザインがオープンソースとして利用可能にならない限り、価格以外の価値に一般ユーザが興味を持ってもらえないと思う。なぜなら現状がそうだから。で、ここでジレンマが生じる。かっこいいデザインをオープンソースとして利用可能にしちゃうと、デザイナーにはお金が入ってこない可能性がある(それは情報を公開する度合いによるけど)。オープンソースとして利用可能にすると、まずは企業がそのリソースを使って製品をつくる可能性がある。それはそれで全然いいことなんだけど、デザイナーの付加価値が簡単にマネできないモノでないと、このオープンソースプロダクトではうまくいかないんじゃないかな?というのが僕のいわんとしていることで、デザイナーは簡単にマネできない付加価値をもっているの?というのが、かなり重要な問いになってくるはず。ちなみに、僕がデザインをオープンにするといった場合、図面等の情報もオープンにすることを想定しています。
  • 解決策とジレンマ
魅力的なデザインをオープンにしない限り、一般ユーザのデザインに対するリテラシーはそのままなはず。今でもニュースサイトでかっこいいデザイン(Dysonの扇風機など)がたまに話題をさらうが、ほとんどのユーザは値段を価値の重要な要因として捉えているので、買ったりするにはいたらないと思う。だから、魅力的なデザインをオープンソースにし、一般ユーザでもつくれるんだ!!とうことをアピールしないと、社会を変えるまでには届かない気がする。だからといって一般ユーザがつくれる魅力的なデザインをオープンにしてしまうと、デザイナーの存在意義が希薄になってくる。
  • 3回目くらいのまとめ
デザイナーや経営者が職人の価値を認めても、ユーザが認めないと長続きする仕組みになり得なくて、そこのところをデザイナーのリソースをオープンにすることでユーザの価値観を変えるきっかけになるんじゃないかと思う。たぶん、オープンソースプロダクトでは、今の電子書籍のように企業側にとってみると、あまりやるメリットが少ない。でも、ユーザにとっては、良質なコンテンツが無料または、紙の書籍よりも安く手に入ったりする。もろに、イノベーションのジレンマみたいな感じですね。でも、僕はこのアイデアはすばらしいと思うので、応援します!!

2010年6月9日水曜日

デザインコンセプト特別講義 小泉望聖 6月9日

  • Web広告、キャンペーンの現状とIMG SRCの取り組み
Webやモバイルのデジタル広告の波が、店舗や交通・屋外、新聞・雑誌まで広がってきている。インターネットやi-modeの影響で、平成8年から18年の間で情報量が530倍になっている。しかし、情報量が増えても人間が処理できる情報量に限りがある。情報量が多すぎるせいで、広告が受け入れられない。そんな中で取り組んだIMG SRCでのWeb広告、キャンペーンについての事例紹介。

  • 感想
マス広告のように一方的なアナウンスではなく、ユーザを巻き込んだタイプのWeb広告が多い。キーアイディアやクリエイティブジャンプにたどり着くには、クライアントからの依頼やターゲットとなるユーザなどについて徹底的に分析する。そこで一旦、いままで考えたものをゼロにして、ゼロベースで考え直す。そのときに、いいアイディアが閃くのだなと思った。

  • これからの展望
Felicaタグ、AR、準静電解がこれからWebやモバイルで流行する。コミュニケーション機能、行動ターゲティング型のコミュニケーションサービスがデジタルサイネージでは流行る。

デザインイノベーション特論 ziba tokyo 平田智彦

  • とあるメーカーの話
とあるメーカーのショールームに行って愕然とした。他のメーカーで売れたデザインのモノマネばかりでオリジナリティのあるものが全然なかった。しかし、売り上げは悪くないので、現状では問題がなかった。そのメーカーに提案を行ったときの話。

  • 現状に対する提案
営業ががんばって売っているので表面上問題はない。しかし、モノマネ製品ばかりつくるところだとユーザーに思われるのでは、長期的にはブランドとして問題になってくる。提案を行うためにキーワードを考えた。
  • 「デザインで¥1,000儲ける」
  • 「High design, High value」
儲かっている現状からさらに1,000円利益を上げる提案では、がんばっている営業も文句が言えない。現状で売れているものは、他のメーカーのモノマネ製品なので、いろいろなところでムダが多かった。1,000円の違いは、製造工程で生まれていた。そこで中身の機構は同じで、外観のパーツを変更した。
  1. 7つの外装パーツを3つに削減
  2. カラーバリエーションを5つから3つに減らして効率化
さらに、他のメーカーの製品で事故が起きた直後だったので、その事故が起きないようなことも考えてデザインに反映させた。その結果、1,000円儲けるデザインが実現して、実際にたくさん売れた。

  • 平田さんが好きなドラッガーの指針?
  1. ミッションは何か?
  2. 顧客は誰か?
  3. 顧客が求める価値は?
  4. 成果は何か?
  5. 計画は?
今日のミッションは何か? ということを考えて毎日行動する。

  • ziba USAの話
ブレストなどのさいに、言葉が70%くらいしかわからなかった。平田さんは、残りの30%を自分の想像力で補い、得意のデッサンでアイディアを視覚化していった。

  • 平田さんの仕事術
仕事がほしいときは、自分からアプローチする。そのとき、お土産のアイディアを考えていく。Designのプライオリティは低い。「デザインで¥1000儲ける」のようにキーワードに力を尽くす。

  • 来週までの課題
自分が行きたい企業に対するデザインの提案を考えてくる。5分のプレゼンができるように、キーワードとスケッチを用意する。

2010年6月4日金曜日

ユーザー工学 6月4日 安藤昌也

ユーザー工学は、今週から、ユーザ調査・ユーザ分析についての講義になります。すごく楽しみ。 1. なぜユーザ調査を行うのか? はじめの方の講義では、評価について扱った。今日からは、デザインプロセスそのものについて扱う。 この分野は、すごくホットな分野。今日はかなり資料を詰め込んだ。誤字等も多いので、直しながら進めていく。 デザインのコンセプトをどうやって見つけていけばいいかについて講義する。 最初の方の講義では、国境の警備システムについての映像を見せたが、そのときの学生から、現場に行っていないから、使いづらいシステムが出来上がったとコメントがあった。 ユーザ調査は、ユーザの生活行為を把握する。調査結果の分析から、発見的・探索的にユーザの要求事項を明確にする。要点: ユーザ調査・分析は、ユーザの利用行動や嗜好性を調査するのではなく、デザイン行為の一部である。 調査というとマーケティングの調査を思い浮かべるが、それとは全然違う。ユーザ工学における調査は、デザイン行為そのものである。 IDEOの話。発想する会社!についての紹介。"イノベーションを可能にするのは、観察に触発された洞察である""自分自身の目と耳で物事を見聞きすることは、画期的な製品の改良や創造の最初の重要な段階である" ABCニュースで一週間でショッピングカートをデザインし直すというプロジェクトについての紹介。youtubeにあるので見てほしい。右はそのリンクです。 http://j.mp/c6vcdq 今日のキーワードのひとつは、deep dive ユーザの世界に深く潜る。そうすることで、いままで知らなかったユーザのニーズを知ることが出来る。 スタンフォードd.school、東京大学i.schoolの紹介。 日本では、ここ数年、観察からデザインを発想するようなことについてすごく活発になってきている。 エスノグラフィについての紹介。エスノグラフィとは、フィールドワークに基づいて人間社会の現象の質的説明を表現する記述の一種。・文化人類学、社会学の研究手法 ・参与観察を行い、研究者が自ら対象の社会を体験する点が特徴  観察やエスノグラフィが注目されるわけ: ユーザが言語化できない、無意識的行為や理想と現実とのギャップを明らかにできる 朝食のエスノグラフィの話。母親に朝食についてアンケートやインタビューをしたら、朝食の重要性について語っていた。しかし、観察しにいくとシリアルなどの簡易的な食事をあげていた。なぜ、事実と違うインタービュー結果になったかというと、価値観の違う姑からチェックされていると感じていたので、 アンケートやインタビュー結果が歪んだ。 観察やエスノグラフィが注目されるわけ2: デザイナー自身が、フィールドに参加することで体験を拡張させ、洞察やデザインのヒントを得ることの効果や効率を重視。 デザイナー自身が洞察を得て、デザインコンセプトをつくることの価値に注目が集まっている ビジネス・エスノグラフィやマーケティング・エスノグラフィについての説明。博報堂でのエスノグラフィについての取り組みについて解説。 繰り返しですが、deep diveということが大事。観察というのは、距離をとってみることが観察。実際には、距離をとりながら相互作用で歩み寄っていくことが重要。 企業競争力としてのエスノグラフィ1: LG電子 アニュアルレポートでも、消費者重視を明確化 WHEN LG ELECTRONICS MEETS CONSUMERSというLG電子のレポート。 PRADAフォンの話。日本の女性はに配慮して、爪の先でもメールがうてるようにタッチパネルの使用を静電式から感圧式に変更。中東向けのメッカフォン2と実は中身がほとんど同じ。 企業競争力としてのエスノグラフィ2: サムソン電子 Understanging Tomorrow's Markets And Consumers サムソンは「地域専門家制度」 エスノグラフィは通常エスノグラファーという専門家が調査するのだが、社員を1年間海外に派遣し、現地社会にとけ込み共生することで、海外の文化や習慣を習熟させる。異文化地域でのビジネス機会やユーザニーズの探索につなげる サムソンは90年代から取り組んでいる。日本企業はいま取り組んでいる。それでは勝てるわけがない。 なぜユーザ調査が重視されるのか? なぜ、デザイン関連分野でこれほどまでに、ユーザ調査を重視するようになったのか? 自分は、これまでにユーザ調査に基づいたデザインを考えたことはあったか? 安藤先生が学生に5分間さきほどのtweetについて考えるように指示を出しています。 僕なりの回答は、企業の規模が大きくなるとものづくりの工程が細分化され、デザイナーとユーザの距離が遠くなってくる。デザイナーは、パソコンに向かってデザインしているので企画部がつくった企画書のターゲットについて深い理解が出来ないままデザインしてしまうことが多いせいではないかと考える。 安藤先生が学生に回答を聞いてまわってます。 昨日をしぼったときにユーザに提供する価値が損なわれないようにしないといけない。 安藤先生からのクリティカルな問いが提示された。高度成長期のものづくりは、恣意的に行われていた。要するに思いつきでデザインをつくっていたわけである。ユーザは現状維持バイアスがはたらくので、ユーザにも正しいことが判断できるわけではない。 学生だと恣意的にデザインをすることはあると思うが、企業でも恣意的にものづくりが行われてきた。ただの思いつきの製品は誰も幸せにならない。 安藤先生が教えている産業技術大学院大学で安藤研というサークルがある。そこでは、恣意的なデザインについては安藤先生が厳しく批判する。 ユーザ調査は、歴史があり、体系化されている。 60~70年代に北欧で取り組まれるようになった参加型デザインがデザインにユーザ調査を取り込むようになったきっかけと言われている。参加型デザインは、元々企業内のソフトウェア開発に、労働者自身が参加し、労働者のサポートになるようなソフトにすることを目指した取り組みである。 マル経の労働疎外なんかの話と参加型デザインの関係性についての話。ここがちょっとよくわからなかった。 Contexual Design: アメリカDEC社のユーザビリティチームだったBeyerとHolzblattによって開発された。フィールドワークによる調査を用いたデザイン手法の集大成であり、実施マニュアルでもあった。 Contexual Designの特徴: ユーザの現場を訪ねるエスノグラフィ的フィールドワークを実施 観察とインタビューを同時に行う、コンテキスト・インタビュー(文脈における質問)を実施 ユーザのタスクや環境を、5つのモデルでモデリングする コンテキスト・インタビューは来週やる。 フィールドワーク(手法: コンテキスト・インタビュー)→データ解釈(手法: ワークモデル分析)→行為の全体像の把握(手法: 統合ワークモデル)→行為(仕事)のリデザイン検討→システムの検討(手法: ストーリーボード)→プロトタイプ・実施(手法: ペーパープロトタイプ/評価) 慶應大学の奥出直人さん(@NaohitoOkude)も取り組んでいるということの紹介。 UMLについて知っている学生はいないか? との問い なぜ、ユーザのモデリングをするのか? ペルソナ・シナリオ法にあえて触れていないのには理由がある。ユーザ調査からペルソナをすぐにつくると、見落としが生じるかもしれない。その見落としを防ぐために調査結果をモデリングする工程が必要だと考えている。 フィールドワークから得られたデータをモデリングするには、3つの意味がある。1. 概念や行為を脱個人化し、さらに構造化することにより、デザインすべき領域や方向性を発見しやすくする 2. ユーザの世界の全体像を可視化することで、関係者間で共有しやすくする 3. フィールドから得た情報を解釈しモデル化することで、ユーザに対する深い理解を得られるようにする アラン・クーパーとのゴール・ダイレクテッド・デザインとの違いは、1の概念や行為を脱個人化し、構造化するということにも関連する。 安藤先生は、リサーチャーなのかもしれない。なんかそんな気がした。 僕の湧いた疑問: ワークモデル分析は、質的研究などで裏付けられた手法なのだろうか? ユーザモデリングの3つのレイヤー(安藤、2010): http://yfrog.com/j8eq3xj ペルソナには、属性と価値が含まれている。シナリオには、行為が含まれている。この3つの情報が含まれていないとデザインできない。 うお、安藤先生の研究の最先端を垣間みている。すごいエキサイティグ。あとで論文をもらおう。 ユーザモデリングとペルソナ法との違い: ペルソナ法は、想定されるユーザであり、価値や行為パターンなどが、重みづけされる。だが、ユーザモデルは、想定ユーザの"全体の幅"を示したものであり、重みづけは特にされない。 デザイン思考の道具箱、デザイン思考の仕事術、About face3、東大式 イノベーションの作り方を参考文献としてあげている。 料理体験を思い出し、そこで使われる道具や環境の写真を3~4点印刷し、持ってくること。

2010年6月2日水曜日

デザインイノベーション特論 佐藤雅彦 6月2日

  • 佐藤雅彦さんとは
今日のデザインイノベーション特論では、佐藤雅彦さんを紹介する。佐藤さんはデザイナーでもないし、面識もないが、作品集を見ておもしろいとおもったので紹介する。デザインに興味があるけど、デザインできない。そんな人は多い。佐藤雅彦さんは、広告代理店という環境でデザイナーの作品に触れることが多かった。そのせいかわからないが、自分の好きなクリエイティブの作品に共通点があることに気づいた。31歳ではじめてクリエイティブ局へ編入。佐藤雅彦さんは電通クリエイティブ局に移動した最初の2年間まったく仕事がこなかった。その2年間で、世界中のCMを見て、おもしろいCMに共通するパターンを見いだした。佐藤さんは自分のセンスに自信がある人ではないので、世の中で受け入れられているCMを分析することで、センスの代わりにしようとした。
  • チャンスについて(山崎先生の話)
若い人に仕事を任せるときは、時間がない、お金がないから、とりあえず、若い人にデザインを任せることが多い。そのチャンスを掴めるかは、その人次第。研究も同じで、なんでその研究がいいのかを発見し、そのルールを自分の研究に生かすことが重要。
  • バザール・デ・ゴザール
物語は重要。バザール・デ・ゴザールは単なるキャラクターではない。物語を演出できる性格をもったキャラクターである。 人間を動かすには、共鳴させること。共鳴させるには、物語を使うこと。そして、物語には主人公が必要。 ゴール・ダイレクテッド・デザインも似た考えの手法である。アラン・クーパーが提唱した。山崎先生の視点からすると、バザール・デ・ゴザールとゴール・ダイレクテッド・デザインは似ている。 佐藤雅彦さんはバザール・デ・ゴザール、モルツとロングヒットなCMをつくる人だな。商品名の連呼だけでなく、他にもいろいろな手法を使っているはず。
  • なんでもやることの重要性
デザインを学んでいる学生は、自分の専門分野に閉じこもりがちだが、佐藤雅彦さんはCMをつくるためなら、作曲や絵コンテなどなんでもこなす。絵コンテには、絵だけでなく、音も表現されている。 紅茶のピコー、ドンタコスの紹介。90年代に商品名を連呼するCMを見たら、佐藤雅彦さんが手がけたものだと思った。
  • ルールとトーン
ルールは大事だが、ルールは出発点にすぎない。ディティールの完成度が作品のよさに影響している。 ルールの他に、トーンの重要性に気づいた。トーンというのは、出来上がりの感触というか感性に響く細かいものである。 地名には著作権がないことを生かした商品名や語尾のシズル感をいかした商品名などを考えた。 佐藤雅彦さんのように、いい研究論文をたくさん読むことで、自分なりのルールとトーンをつくり、それから研究を進めることで、いい研究テーマを見つけることができる。 人のつくった作品のルールを分析する作業ではなくて、自分でルールをつくる方にまわるため、電通を退社したのではないかと考えている。
  • 作品と意図
Play StationのIQをつくった。だんご三兄弟の作詞作曲を担当。ポンチキ、うごくID、日本のスイッチ... 佐藤雅彦は新しい手法とか考え方をつくる人。人とは違う手法を使う。そのことで人とは違うアウトプットを出す。砂浜という小説では、声で喋るだけで小説をつくった。 ICCでの展示に関する動画を見ている。自分のからだを変換してみよ展。 人と同じ手法を使えば、アウトプットが似てきてしまう。独自のアウトプットを出したいなら、人と違う手法を使わなければならない。 信号機の信号が変わるタイミングを視覚化したものや山手線のダイアグラム、サッカーのパスの方向、文字を書くときのペンの空間的な移動の軌跡...を見ている。 pro-gramという考えを用いた作品集。
  • 佐藤雅彦と山崎和彦の交差点
ほとんどのものには、ルールとトーンがある。 裏に隠れているルールをいかに見せるのか、ということを視覚化したのが、さきほど上映した佐藤雅彦さんの作品。情報デザインとも繋がってくる。 方法や手法を考える上でのヒント。何かデザインをするときには、デザインでどういう体験が得られるかということを考えていて、それがUser Experience もう一つは、モノから発想する。それはどんなモノなの? User Experienceとどんなモノかという考えの間で、Interactionが起きる。content←→form 人とモノの両方から見ることで、デザインが見えてくる。両方を繋ぐのがデザイン。 デザインというのは、目標のためのプロセスとメソッドである。目標がないなかで、プロセスとメソッドを教えても意味がない。どんなものをつくったらいいのかということがすごく大事で、難しい。

デザインコンセプト特別講義 澄川伸一 6月2日

  • 澄川伸一さんの経歴と思考の変遷
山崎先生による澄川さんの紹介。Good design awardの審査員の関係で知り合った。 大学は千葉大だった。津田沼の予備校でアルバイトをしていた。 IDよりは、外部から講師の人が来る空間デザインに興味があった。たまたま、ソニーの選考を受けたら通ってしまい、そこからIDの世界に入り込んでしまった。 いま考えるプロダクトデザインと昔考えるプロダクトデザインはかなり違う。昔は車に象徴されるように、地味な存在だったと思う。いまでは、プロダクトデザインのイメージはよくなってきたので、時代の変化を感じる。 ベースになっているのは、ソニー時代の仕事の進め方。澄川さんは、大きい会社に一度入ってしまうことが大事だと考えている。営業や製造などのデザイン以外のことを経験できるのは、大きな会社ならでは。また、大きな会社では比較的大きな仕事が回ってくる確率も高い。 デザインするときに、デザイン以外のことをいかに20代のうちに体験することが大事。その経験が30代、40代になってデザインに生きてくる。人と違うことをどれだけやれるかがその人の魅力に繋がってくる。 課題が忙しくても、いろんな経験を積むこと。それがあとで役に立つ。独立した動機というのは、死ぬまで電卓のボタンをやって終わる人もいるが、それはいやで、身の回りのものをすべてデザインしたいというのが、独立した原動力になっている。 いまも仕事自体は非常に忙しく、締め切りに追われる日々を送っている。からだを鍛えることは大事。いつも鼻水をたらしているようでは、仕事が回ってこないと言っても過言ではない。 とにかく元気で体力がある。それはデザイン以前の問題。フリーランスになるとその部分がさらに大事。締め切りの何日も前に完成させて、ブラッシュアップさせることでデザインがよくなっていく。 できるだけ余裕を持ってデザインを仕上げる。
  • ポートフォリオについて
あとは作品集。毎年雇ってくださいとお願いする学生が出てくる。基本的に、デザインはひとりでやる。3Dのソフトの線一本でも他人がやったのは違う。ヨーロッパの学生は、自分を売り込むのが、非常に熱心。オランダのデザインが最近は非常におもしろい。ドローグデザインやPhilipsのデザインもおもしろい。ヨーロッパの学生は、いきなりPDFを澄川さんのところに送ってくる。澄川さんも送られて悪い気はしない。まずはポートフォリオの完成度。紙のポートフォリオよりもPDFのポートフォリオを用意すること。これは世界標準です。
  • アイディアの出し方
今日は、アイディアの出し方の話をする。 プロダクトデザインにおけるコンセプトの見つけ方
  1. すべてのヒントは現場にある
  2. まず、現場に行ってみる
その行動力が他人と差をつける。
  • SONYのころの話
ソニーにいたとき、4年間はアメリカのニュージャージーにいた。日本でデザインしたものをアメリカでうっていて、それを見直そうということになった。日本のデザイナーが想定したベルトクリップは、腰につけてもらえず、アメリカの人は、手にもってウォークマンを使っていた。 手に吸い付くようなウォークマンのデザインを提案した。嘘のようにスムーズに製品化された。グリップウォークマン。ナイキやスキーシューズに曲線的なテイストが用いられるようになった。その影響でグリップウォークマンには、曲線が用いられている。企画書がきてやるインハウスデザイナーの仕事の他に、自分で提案することをぜひやってほしい。デザインの発注がきたと同時に現場に出向くのが基本になっている。
  • タワーレコードの音楽自動販売機
iTunesなどで音楽販売が普及される前(2000年頃)のタワーレコードのデザイン。タワレコはガラス張りの店舗なので、音楽の自動販売機を置くときは側面のデザインが大事だと考え、デザインの基本に据えた。 まず、プライオリティーをつけてみる 課題でも何でもそうなのだけど、全部を同等に捉えると手が進まなくなる。何かを犠牲にして、何かを生かす。必ず相手に何が大事かを初期の段階で、明らかにする。プライオリティーの低いことを消し去ることで、いいデザインをうみだすことができる。
  • プロ用一眼レフカメラ
MamiyaZDのプロ用のカメラをデザインした話。プロ用になればなるほど、レンズの値段の方が高くなってくる。アナログからデジタルに移行するとき、プロの方は数百万円する資産を持っている。コンセプトは、いままで持っていたレンズに敬意を払うこと。レンズを取り付ける台座をちょっと強調したデザインにしてみた。一眼レフカメラのデザインは難しい。片手でシャッターを押しつつ、レンズの絞りを調節できるようにしないといけない。その他に重量バランスも考慮しないといけないので、一つデザインするとかなりヘロヘロになる。 10色以上の黒を用いている。黒の使い分けをしている。そこにもプライオリティーが発生している。 一眼レフをデザインするときに役立ったのが、SONYのころにデザインしたラジオ。世界時間を搭載したラジオだった。マニュアルがなくても何となくわかる。ベースに対してコントラストや面積が大きいほど重要なパーツである。 階層化させるという部分。いまはiPadやiPhoneにしても物理的なボタンがなくなってしまった。しかし、ソフトウェアによるボタンは押したときの安心感がある。そこで揺り戻しが起きるかどうか興味深い。
  • 澄川さんの作品と意図
動きをデザインしてみる 自転車のデザイン機で、川崎デザインコンペで優秀賞を受賞した。潮の満ち引きに例えて、デザインしてみた。自転車が置かれていないときの駐輪機はかっこわるい。 浴槽に入ると湯船の水位が上がる。その動きを何か表現できないか。水位が上がると肘掛けなどが独立した島として現れる。 pecon! 外国で評判が良かった。Ashコンセプトで販売されている。 軟式のボールを切って反転させることをしていた。そこから発想したのが、pecon!である。エッシャーの騙し絵もそうだが、地と図の反転はいろんなことに活かせるのではないかと考えている。 Pekon vitamin case. Ashコンセプトの社長に、7年前金型がつくれなかったものがつくれると声をかけていただき実現した。 かたちを考えて、思いつかないときは、CADを使用するのをやめて、粘土や発泡スチロールなどを用いて、手にフィットするかたちから考えてみる。 日本酒の器の話。立食パーティで手に持って使えるようなものを目指した。婦人用の体温計。女性が朝起きて一番最初に目にするものなので、その観点から見て、よくなるようにデザインした。 視点の転換 頭の上にカボチャを乗せている人の写真。頭の上にモノをのせることで、遠くの人から見つけやすくすることができるし、その結果、売れる可能性が高まる。 倒れるものをたてると価値が発生する タイルの一部を傘立てや一輪挿しができるように組み替えられるタイル。 同じような発想で、立たせる歯ブラシを考えた。歯ブラシには、歯ブラシケースがあるが、ブラシの部分は乾燥させたい。そこで立たせる必要があった。 靴べらの話。玄関先に、セルロイドの靴べらがあるが、お客様に使われたりする可能性のあるものなのに、かたちがよくなかった。贈り物などでよく用いられる。 独立後、最初に手がけたデザインの話。モックに60万円のお金をかけた。賞がとれたのでトントン。 漆のお盆の話。同心円をちょっとずらすことで、 日立のプロジェクタの話。光量が強いので、そのイメージをデザインするときに、スポーツカーの力強さからインスピレーションを得た。 陰で魅せる時計。針は三角形でできている。MOMAに収蔵されている。 古いものを再構築してみる 漆はモダンな色が多い。結構埋もれているような色を使うことで現代的な表現を可能にする。 世界一美しいハンガーをつくろうと考え、ハンガーがかかっていない状態が美しいハンガーをつくった。 ダンベルを持って走っている人を見かけたが、別にダンベルである必要はないと考え、美しいスポーツ飲料のケースをつくった。持って走ることも想定されている。 潜在意識下の色を使用。ヒントは現場にある。
  • 発想のストック(海外旅行のすすめ)
海外で見つけたもの。大学の後半から、バックパッカーのように海外をふらふらふらふらしていた。 20代のメインの趣味がバックパッカー。57/220カ国訪れた。いまは治安も悪いので、おすすめはできないが、海外の何も知らないところへ行ってみるとおもしろい。 青い雪の話。氷河が青いだけで、非常に美しい。 アメリカでおもしろいのは、ユダとかその周辺。ラスベガスに行ったら、グランドキャニオンに行くことをお薦めする。こういうのは、その場に行かないとわからない経験。 観光客が行かないような場所にレンタカーで行く。ソルトレークシティに近い猿の惑星などのロケ地の写真。 トルコのカッパドギアの写真。 ヒマラヤ、アンナプルナというベースキャンプまで行った。カトマンズから往復2週間で行けた。2週間という時間は、社会人になってからでは難しいので、いまのうちにいくことをお薦めする。 モスク。蟻塚を崩してつくった建築の写真。昆虫は調べれば調べるほどおもしろい。 ここでもスターウォーズの撮影があった。なるほどなと思った。 風 アルゼンチンの国道。フロントガラスの前に金網をつけないと動物が飛んできて、フロントガラスが壊れてしまう。これも現場にいないとわからない。 世界を変えるデザイン展の話。ドーナツ型の水を転がして運ぶことができるデザインの話。まだ開催中なので見てほしい。 仮面 ニューギニア。昔は部族間の抗争は頻繁に起こった。いまでは、お面の見せあいだけが残った。炎天下でお面がドロドロにとけてしまう。 ブータン。非常に日本に似ている。チベットの国。色の使い方が違う。それがおもしろい。共通項が違うところであるのはおもしろい。 ハイチの乗り合いバス。ペイントするのが当たり前で、ハイチではあまり色がない。その中でのデザインが非常におもしろい。 ポルトガルのナザレという町。 絵文字 亀のギター。モロッコで発見した。衝撃的だった。 セネガルの床屋さん。看板が非常に魅力的。これをアートとしてしゅうする人が出てきた?? いろんなところに行くと、いろんなものを見る。ロバが自分の体積の20倍くらいの藁を運んでいる写真。 モスクワの地下鉄の話。透明なおはじきのようなMのデザイン。軽いので何枚ポケットに入れても重くならない。 モスクワというと固いイメージを井達いる人が多いと思うが、アールヌーボーの天国。 できるだけ情報の少ないところに行って何かを見つけることが非常におもしろい。けがや事件に巻き込まれないうちにいろんなところへ行くことが一番伝えたいこと。
  • 質疑応答
Q. いつから曲線に興味を持ったのか?
A. もともと興味があった。昔は想像した曲線をうまく表現できなかった。3DのCADが15年前に登場したときに、やりたいことができるようになった。曲線から局面を構成している。ライノセラスを使っている。 いま、3次元の世界でモデルをいかにつくるかということに関して世界が進んでいる。光造形だと1日あればモデルをつくれるが、3Dプリンタだと2~3時間でできる。会議中にちゃちゃっとつくってメールを送れば、すぐに作成することができる。 3次元をレンダリングのためだけに使うのは、もったいない。それから現物をつくることでイラレやフォトショップでは得られない大量の情報が得られる。昔は、イラレから3面図をつくって3Dに直して、というプロセスを踏んでいたが、いまではすぐに3Dからつくれることがデザイナーに求められる価値 スケッチよりも3Dで早くつくれることがこれからのデザイナーにとって非常に重要である。
Q. 世界を旅されることで得たものは?
A. 例えば、電車のつり革にしても日本では、丸く中が開いていて掴むことができるタイプのものが普通だが、ロンドンでは、握るタイプのつり革がある。現場での吸収力がデザインに生きてくる。 特に東欧は一種の鎖国状態なので、その中から出てきたデザインは非常におもしろい。感動を覚える。例えば、段ボールで出来ていた車もあった。 自分で当たり前だと思っている答えが地球の裏側であって、それが実は重要なんじゃないかと感じる。 青山に行けば深澤直人がデザインした加湿器を見ることが出来るが、それだけを見ていたらデザインは出来ない。むしろ、デザイナーがデザインしたものを見ない方が、新しい加湿器をデザインできる。
Q. ロジカルにデザインを考える方だと感じたが、感覚的にデザインを発想されることはないのか?
A. ロジカルと感性は両立して、進んでいる。澄川さんが元々いたところは、ロジックが強い学校だった。それに反発するかたちで、美しさを追求するようになった。 デザイナー同士で話を進めるときは、感性的で通じるが、営業などの別分野の人と話をするのはロジカルじゃないといけない。 人がモノを買うときは、ロジカルに考えていない。感性的に判断している。あまりロジックに偏りすぎるとよくないが、感性に偏りすぎてもよくない。 ロジックに考えることは誰でもできることで、それを追求するのはデザイナーの仕事ではない。
Q. ロジックに関連して、エンジニアリングの話。3Dなどで簡単につくれるとそれがそのままつくれると勘違いする人も出てくると思うが、澄川さんは最初から製造のことを考えてデザインできたのか?
A. 企業に入ってから、学ぶことが非常に多かった。教科書で金型のワリを学んだが、企業に入れば嫌でも学ぶことが多い。いまのうちは、実務の知識を学ぶ必要はなくて、デザインのストック、分母、美しいデザインをいまのうちに学んでおくことが重要じゃないかと考える。 自分の作りやすいかたち、自分のつくりたいモノはなんだろうということを考えるのが先決。技術はどんどん進んでいくので、かたちをつくることが重要。

2010年6月1日火曜日

横溝先生の講義 フセインチャラヤンからアクセサリー

千葉工大と多摩美を比較したプレゼン終了。横溝先生による講評。artとscienceを繋ぐハイブリッドな考えが必要。art and scienceがいいのではないか? ないものを追求するのではなく、相手が既に持っているものと自分たちの持っているものを掛け合わせて、新しい考えを生み出すことが必要。 プレゼン終了。俯瞰して、日本社会全体として、千葉工大のデザイン科学科はどういう位置づけなのかということを考えて、そこから問題にフォーカスするといいとアドバイスを頂いた。 眠い。プレゼンするには照明を落とさないといけないのだけど、そうしないでプレゼンする方法ってないのかな? その方法を考えられたら、結構すごい気がする。 デザインの役割とは、という話に発展。先生は、デザインはハブになることである、と捉えている。ある院生は、デザインとは、すべてを包括する存在がデザインであると捉えている。 イタリアでは、優秀なデザイナーのことをprogetistaと呼ばれる。 デザインとは、枠組みづくりができること。 大学のパンフレットには、いろんな学科の紹介が載っているが、そのすべてにデザインという言葉が入っていた。その中で、デザイン科学科にしかできないことは何なのか。高校生がわからない。 学部の頃は、教授は学生から何かを学ぼうという姿勢はほとんど感じられなかった。院生のいまは、先生が講義を通して何かを学ぼう、という姿勢がすごく感じられる。この差が与える影響は、かなり大きいと思う。 媒体は、accessory. 課題を解決するものではなく、課題を知らしめるものをつくる。 いいAccessoryがつくれたら、Milano salone2011, Tokyo Designers Blockで展示、販売するかもしれない。 風土、土壌、コンテクストが見えるアクセサリーかつ売れるものをつくらないといけない。この課題は、おもしろすぎるw 上限は3000円くらいでつくる。 アクセサリーを通して伝えたい意味的価値をチーム内で共有する。自分たちはテーマを通してこういう価値を提供して、社会にこういう価値を提供したいということを考えてくる。身につけたときの印象やそこからどう広がるかも考える。 どろだんご。小さな価値観の共有が包括した価値として繋がってくる。 解決すべき課題を語ってくれるアクセサリーをつくれということかな。 どろだんごは、ものづくりの楽しさを思い起こさせてくれる抽象的な概念。本来のもの作りの楽しさを取り戻して、社会へ巻き込んでいく。知りたいと思ったら、語ってくれるものでないといけない。