2010年6月4日金曜日

ユーザー工学 6月4日 安藤昌也

ユーザー工学は、今週から、ユーザ調査・ユーザ分析についての講義になります。すごく楽しみ。 1. なぜユーザ調査を行うのか? はじめの方の講義では、評価について扱った。今日からは、デザインプロセスそのものについて扱う。 この分野は、すごくホットな分野。今日はかなり資料を詰め込んだ。誤字等も多いので、直しながら進めていく。 デザインのコンセプトをどうやって見つけていけばいいかについて講義する。 最初の方の講義では、国境の警備システムについての映像を見せたが、そのときの学生から、現場に行っていないから、使いづらいシステムが出来上がったとコメントがあった。 ユーザ調査は、ユーザの生活行為を把握する。調査結果の分析から、発見的・探索的にユーザの要求事項を明確にする。要点: ユーザ調査・分析は、ユーザの利用行動や嗜好性を調査するのではなく、デザイン行為の一部である。 調査というとマーケティングの調査を思い浮かべるが、それとは全然違う。ユーザ工学における調査は、デザイン行為そのものである。 IDEOの話。発想する会社!についての紹介。"イノベーションを可能にするのは、観察に触発された洞察である""自分自身の目と耳で物事を見聞きすることは、画期的な製品の改良や創造の最初の重要な段階である" ABCニュースで一週間でショッピングカートをデザインし直すというプロジェクトについての紹介。youtubeにあるので見てほしい。右はそのリンクです。 http://j.mp/c6vcdq 今日のキーワードのひとつは、deep dive ユーザの世界に深く潜る。そうすることで、いままで知らなかったユーザのニーズを知ることが出来る。 スタンフォードd.school、東京大学i.schoolの紹介。 日本では、ここ数年、観察からデザインを発想するようなことについてすごく活発になってきている。 エスノグラフィについての紹介。エスノグラフィとは、フィールドワークに基づいて人間社会の現象の質的説明を表現する記述の一種。・文化人類学、社会学の研究手法 ・参与観察を行い、研究者が自ら対象の社会を体験する点が特徴  観察やエスノグラフィが注目されるわけ: ユーザが言語化できない、無意識的行為や理想と現実とのギャップを明らかにできる 朝食のエスノグラフィの話。母親に朝食についてアンケートやインタビューをしたら、朝食の重要性について語っていた。しかし、観察しにいくとシリアルなどの簡易的な食事をあげていた。なぜ、事実と違うインタービュー結果になったかというと、価値観の違う姑からチェックされていると感じていたので、 アンケートやインタビュー結果が歪んだ。 観察やエスノグラフィが注目されるわけ2: デザイナー自身が、フィールドに参加することで体験を拡張させ、洞察やデザインのヒントを得ることの効果や効率を重視。 デザイナー自身が洞察を得て、デザインコンセプトをつくることの価値に注目が集まっている ビジネス・エスノグラフィやマーケティング・エスノグラフィについての説明。博報堂でのエスノグラフィについての取り組みについて解説。 繰り返しですが、deep diveということが大事。観察というのは、距離をとってみることが観察。実際には、距離をとりながら相互作用で歩み寄っていくことが重要。 企業競争力としてのエスノグラフィ1: LG電子 アニュアルレポートでも、消費者重視を明確化 WHEN LG ELECTRONICS MEETS CONSUMERSというLG電子のレポート。 PRADAフォンの話。日本の女性はに配慮して、爪の先でもメールがうてるようにタッチパネルの使用を静電式から感圧式に変更。中東向けのメッカフォン2と実は中身がほとんど同じ。 企業競争力としてのエスノグラフィ2: サムソン電子 Understanging Tomorrow's Markets And Consumers サムソンは「地域専門家制度」 エスノグラフィは通常エスノグラファーという専門家が調査するのだが、社員を1年間海外に派遣し、現地社会にとけ込み共生することで、海外の文化や習慣を習熟させる。異文化地域でのビジネス機会やユーザニーズの探索につなげる サムソンは90年代から取り組んでいる。日本企業はいま取り組んでいる。それでは勝てるわけがない。 なぜユーザ調査が重視されるのか? なぜ、デザイン関連分野でこれほどまでに、ユーザ調査を重視するようになったのか? 自分は、これまでにユーザ調査に基づいたデザインを考えたことはあったか? 安藤先生が学生に5分間さきほどのtweetについて考えるように指示を出しています。 僕なりの回答は、企業の規模が大きくなるとものづくりの工程が細分化され、デザイナーとユーザの距離が遠くなってくる。デザイナーは、パソコンに向かってデザインしているので企画部がつくった企画書のターゲットについて深い理解が出来ないままデザインしてしまうことが多いせいではないかと考える。 安藤先生が学生に回答を聞いてまわってます。 昨日をしぼったときにユーザに提供する価値が損なわれないようにしないといけない。 安藤先生からのクリティカルな問いが提示された。高度成長期のものづくりは、恣意的に行われていた。要するに思いつきでデザインをつくっていたわけである。ユーザは現状維持バイアスがはたらくので、ユーザにも正しいことが判断できるわけではない。 学生だと恣意的にデザインをすることはあると思うが、企業でも恣意的にものづくりが行われてきた。ただの思いつきの製品は誰も幸せにならない。 安藤先生が教えている産業技術大学院大学で安藤研というサークルがある。そこでは、恣意的なデザインについては安藤先生が厳しく批判する。 ユーザ調査は、歴史があり、体系化されている。 60~70年代に北欧で取り組まれるようになった参加型デザインがデザインにユーザ調査を取り込むようになったきっかけと言われている。参加型デザインは、元々企業内のソフトウェア開発に、労働者自身が参加し、労働者のサポートになるようなソフトにすることを目指した取り組みである。 マル経の労働疎外なんかの話と参加型デザインの関係性についての話。ここがちょっとよくわからなかった。 Contexual Design: アメリカDEC社のユーザビリティチームだったBeyerとHolzblattによって開発された。フィールドワークによる調査を用いたデザイン手法の集大成であり、実施マニュアルでもあった。 Contexual Designの特徴: ユーザの現場を訪ねるエスノグラフィ的フィールドワークを実施 観察とインタビューを同時に行う、コンテキスト・インタビュー(文脈における質問)を実施 ユーザのタスクや環境を、5つのモデルでモデリングする コンテキスト・インタビューは来週やる。 フィールドワーク(手法: コンテキスト・インタビュー)→データ解釈(手法: ワークモデル分析)→行為の全体像の把握(手法: 統合ワークモデル)→行為(仕事)のリデザイン検討→システムの検討(手法: ストーリーボード)→プロトタイプ・実施(手法: ペーパープロトタイプ/評価) 慶應大学の奥出直人さん(@NaohitoOkude)も取り組んでいるということの紹介。 UMLについて知っている学生はいないか? との問い なぜ、ユーザのモデリングをするのか? ペルソナ・シナリオ法にあえて触れていないのには理由がある。ユーザ調査からペルソナをすぐにつくると、見落としが生じるかもしれない。その見落としを防ぐために調査結果をモデリングする工程が必要だと考えている。 フィールドワークから得られたデータをモデリングするには、3つの意味がある。1. 概念や行為を脱個人化し、さらに構造化することにより、デザインすべき領域や方向性を発見しやすくする 2. ユーザの世界の全体像を可視化することで、関係者間で共有しやすくする 3. フィールドから得た情報を解釈しモデル化することで、ユーザに対する深い理解を得られるようにする アラン・クーパーとのゴール・ダイレクテッド・デザインとの違いは、1の概念や行為を脱個人化し、構造化するということにも関連する。 安藤先生は、リサーチャーなのかもしれない。なんかそんな気がした。 僕の湧いた疑問: ワークモデル分析は、質的研究などで裏付けられた手法なのだろうか? ユーザモデリングの3つのレイヤー(安藤、2010): http://yfrog.com/j8eq3xj ペルソナには、属性と価値が含まれている。シナリオには、行為が含まれている。この3つの情報が含まれていないとデザインできない。 うお、安藤先生の研究の最先端を垣間みている。すごいエキサイティグ。あとで論文をもらおう。 ユーザモデリングとペルソナ法との違い: ペルソナ法は、想定されるユーザであり、価値や行為パターンなどが、重みづけされる。だが、ユーザモデルは、想定ユーザの"全体の幅"を示したものであり、重みづけは特にされない。 デザイン思考の道具箱、デザイン思考の仕事術、About face3、東大式 イノベーションの作り方を参考文献としてあげている。 料理体験を思い出し、そこで使われる道具や環境の写真を3~4点印刷し、持ってくること。

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