2010年7月1日木曜日

デザインコンセプト特別講義 6月30日 佐々木千穂

これからデザインコンセプト特別講義で、インフィールドデザインの佐々木さんによる講演です。佐々木さんは、イリノイ工科大学でHuman centered designを学ばれて、その後IDEOに就職し、現在に至るはずです。
  • 「共感」から発想するデザインコンセプト~望ましい経験をデザインする~ 佐々木千穂
サッカーで寝不足の方もいると思うが、寝ないで聞いてほしい。山崎先生とは、Good designの審査員で知り合った。元々は、グラフィックデザインをやっていた。今は、デザインコンセプトをつくりあげるということを仕事にしている。イリノイ工科大学は、千葉工大に似ている雰囲気がある。IDEOの東京支社で働いていた。深澤直人さんの元で働いていた。IDEO時代のことやインフィールドデザインのことについて話していく。私たちの身の回りには、多くのものやサービスがあふれています。ボタンがかなり多い電話機の例。赤坂サカスには、従来の受付嬢もいるが、携帯電話に訪問予定のメールを送ってくれる。受付番号を発行してくれ、受付番号を赤坂サカスにある機械に入力すると、入場ゲートを通過できるチケットが発券される。
モノづくりは「機能ありき」ではうまくいきません。提供すべき「経験」からデザインをしましょう!
人の経験からデザインをしていくということをサービスとして行っている。experience design? 経験のデザイン?誰の経験をデザインするの?「誰もが、つい守ってあげたり、面倒を見たくなる空想の生物」の外観を考えてください。5つの満たすべき条件が示される。それに基づいてつくられたデザインは、あんまり美しくない。条件に頼ったデザインはよくない。条件さえあえば絶対に大丈夫? スライドの背景には、結婚情報サイトの条件が載っている。頭で考えても「誰か」のための「望ましい経験」はデザインできないパット・ムーアの試み 85歳のおばあさん 3年間、アメリカ中を旅した経験を記録した本を出した。先ほど85歳と言ったが、実は26歳。特殊メイクを施し、85歳になりきった。脱・主要ユーザーのためのデザイン 見過ごされていた「自分ではない人」に注目し、共感することでデザインを生み出す。「傾向」ではなく「共感」が大事傾向というのは、データ スーパーでのアンケートデータ 品揃えのよさが一番にあがっていた。買い物帰りに電車に乗り、スーパーのビニール袋をS字のフックを使い、電車内に吊るしている様子。 共感のスライドで自分以外の人で共感を得るためには、オブザベーション(観察)なるほどな。共感するために、観察を用いるのか...観察(オブザベーション)で探すもの 極端なユーザを訪問座布団で覆われたパソコンの写真 子どもがいじらないように。病院の水道。バリウムを飲んだあとには、下剤を飲まないといけない。本来は調整できるつまみがあるのだが、あえてペットボトルでふたをしている。緑のセロファンをカーナビにつけた写真 車の運転手の困っていることがわかる。疑問 工夫をしていない場合は、モノを見ても問題点がわからないよね。あと、極端なユーザの知見をどのように還元するかも知りたい。モノを見れば、その人にとって何が大切かということがわかる。自宅に大量の透析機の段ボールがある人の例。透析の段ボールが多すぎる。やけどして歩けなくなることを恐れて、大量の靴をストックしている人の話。その人はウォーキングがものすごく大切な位置を占めていることがわかった。興味深い矛盾 矛盾点を見つけるのもおもしろい。「正しい」使い方をしない理由 夜はまぶしすぎるので、照明の電球を緩めることで暗くする。濡れた手では、触りたくないので、肘で操作している例。例えば、ほこりをかぶっている製品は、長い間使われていない。
オブザベーションで実施している3つのこと: 見る、試す、頼む
  • 見る
見ることの例: ビデオによる時の経過観察、社員が100人くらいいるのでインタビューは不可能、でもアンケートでは傾向しかわからない。カメラを設置し、動線のパターンから発券をする。絶対に人が行かないエリア、混雑するエリアというのがパターンとして見えてくる。見る: fly on the wall(壁にとまったハエ) 最初は、ハエが壁にとまっていると気になるが、次第に気にならなくなってくる。大阪でクッキングの観察を行った例。見る: シャドウイング 陰のように対象者についていく。
  • 試す
2つ目の試す 視点を理解するために人の経験を強調する方法を考える試す: ロールプレイング IDEOのときの話。病院のリデザイン。患者の経験を疑似体験する。試す: 行動サンプリング 商品やサービスが入り込む人々の日常にはどんなものがあるか可能性を発見する AEDの話。これもIDEOのときのプロジェクト。
  • 頼む
3つ目は頼む 人々の協力を求める頼む: インタビュー 極端な人々は、気がつかなかった重要な点に気づかせてくれる。アラフォーなどの多い人ではなく、今まで見過ごされていたコアな人たちに話を伺うようにしている。頼む: デモンストレーション テーブルクッキング 息子に料理をつくるのが好きなおばあさんの話。料理を作る際に椅子に腰掛けて、ジャガイモを剥く。頼む: 考えを声に出す 同期、懸念、認識、論理を明らかにする。頼む: 写真日記 観察者が入り込みづらい時間や空間での暮らしを知る。寝室など他人が入り込みにくい領域で使う。頼む: ドローイング 頭の中でものごとをどう捉えているかを描いてもらう頼む: ガイドツアー 実際の空間における考えや価値観を浮き彫りにする 大学のリデザインの話。昔の卒業生や守衛さん、学生などに大学を案内させることで大学のリデザインのヒントを探る。頼む: show&tell その人にとって特別な重要性をもつものを知る 三歩中に自分がどうかなってしまうことを心配している。頼む: ワイン&ダイン(whine&dine) 些細な話題を開放的な雰囲気の中から引き出す ワインはスペルを見ればわかるが、お酒のワインではない。繊細な話題を取り扱うときは、お酒などを投入することでしゃべりやすくする。

オブザベーションで、データを集めるのは誰でもできる!素材がよければ、それで終わりではなくて、その素材をいかに料理するかが大事。人の行為や記憶からの直接的発想 USBハブの例。誰でも知っているコンセントから発想を得て、USBハブに反映させる。同じ指すという行為を活かした。しかし、どんなものでも直接いかせる訳ではない。気づきから発想への「近道」は危険 データを発想に活かすためには、事実から洞察を導きだし、そのあとに望ましい経験を考え、発想につなげる。エクスペリエンスデザインの山。近道をするのでなく、山を登ってコンセプトを考える。
  • IDEO depaul health center
病院のリデザイン 以前つとめていたIDEOのプロジェクト 自分がかかわった訳ではないが、好きなプロジェクト。depaul health center: 患者、医者、その他医療スタッフのロイヤリティ向上を狙う。問題点がたくさんありすぎる。まずは、非常に長い待ち時間など手を付けやすい問題点から解決し、そのあとに病院の側で継続的に解決を行えるプロジェクトチームをつくった。病院に勤務しているが、意外と病院のことは知らない。そこで観察を行った。シャドウイングやフライオンザウォールなどを用いた。映像が流されている。たぶん、病院で経験する一連の動画に、患者が思う心のつぶやきを動画の上に文字でオーバーレイしている。動画で病院側にプレゼンしたが、ずっと白い画面が続いた。病院の人たちは動画が故障したのではないかとイライラしていたが、その白い画面は患者が一日中見ている天井の白色だった。そこで、病院の人たちは患者に共感を得ることができた。統合: デザイン原則を定めた。馴染みのあるものを基に。プロセスを明らかに。期待値をうまく管理する。レセプションデスクに人は常にいない。しかし、そこで待つ患者が多かった。これは期待値をうまく管理できていない例。発想〜視覚化 病院で「私についてこい」という人に誘導されるが、その人は誰なの?といった疑問に答えるために職名を記したユニフォームを着させるなどということを考えた。アイデアを考えたが、そこでユニフォームを全部つくってしまおうというのではなく、プロトタイプを用いて評価する。スケッチしただけのアイデアも、プロトタイプすることでうまくいかないことに気づくことも多い。ストレッチャーで押してくれる人がいるけど、その人がどんな人かわからないので不安ということがあったら、ストレッチャーにバックミラーをつけるということをプロトタイプした。お金のないプロジェクトなので、実際につくるところは、他のデザイン会社に任せた。患者の視線範囲が床に示された病室。これを見たスタッフは患者の視線の範囲を感じることができる。その後も、IDEOのスタッフを含めないで、自分たちでプロトタイピングをして、病院を改善していくプロセスが根付いた。聞いたことは、忘れてしまう 言ったことは、覚えている やったことは、理解ができる -老子老子の言葉は、エクスペリエンスデザインからプロトタイピングを行っている私たちの会社と一致している。
  • EPIC2010
佐々木さんからEPIC2010の案内。エスノグラフィーの国際会議がアジアで初めて開催されます。もし、ご興味があれば、よかったらご覧ください。http://www.epiconference.com/epic2010/以上で講演は終わりです。質疑応答に入ります。
Q.教育の分野で共感は応用が利きそうだが、実際に用いられているのか?
A.教育の現場での例をたくさん知っている訳ではないが、エクスペリエンスデザインの全部を実施することは難しい。子どもの目を通じて、理解するということと、大人の目を通じて子どもを理解するという例がある。
Q.エスノグラフィの費用対効果などを考えると、簡単な手法などを用いられることがあるのではないか?
A.最近の企業は理解がある。8~10人に対してリサーチする。会社のデザイン部門でもエクスペリエンスデザイン部などがある。
Q.認知過程のエスノグラフィはどうやってわかるのか?
A.認知過程はデータの解析に近い分野である。目の動きだけでモノをつくるには限界があるけど、人とモノの関係を分析するにはよい手法である。
Q.共感は人それぞれだと思うが、その感覚はどうやって養うか?
A.自分の価値観と照らし合わせて、人は共感している。自分が気がついたことを、分析する段階は一人ではやらない。自分が共感しやすい人には、ポジティブな意見を出すが、自分が共感しにくい人には、ネガティブな評価をしてしまう。評価をしてしまってはダメ。まずは自分が共感しやすい人から共感をする。そこからどんどん広げていく。僕の疑問: 観察とコンセプトメイクの割合はどんな感じでやっているのか? 極端なユーザの知見を活かす際の注意点は?
Q.ユーザが自分のことをなかなか話してくれない場合は?
A.しゃべってくれない場合は、周りにあるものを見ること。周りを見て、犬の写真があったりしたら、犬の話題を振ることでユーザに共感を得ることができる。
Q. 共感を養うために意識されていることは?
A. 常にデジカメを持ち歩いている。頭の中に興味のあるトピックをいくつかもつことで共感を養っている。以上で、インフィールドデザイン 佐々木千穂さんの講演は終わりです。ありがとうございました!! 懇親会終了。懇親会での佐々木さんを見ていて感じたのが、会話を繋げる能力がものすごく高い人なんだなということ。相手から話を引き出す能力がものすごい。

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