2010年5月18日火曜日

トライポッド中川聡さんの講演(2008年3月ごろ)

まず、ワークショップの前にあったトライポッド中川聰さんの講演が非常に印象的でした。中川さんは、ユニバーサルデザインの教科書などを書かれている方です。


僕が一番印象に残ったのは、中川さんがペンを握れなくなった人から発想を得て、新しいペンを作ったことです。イメージとしてはPILOTがDr.Gripを開発したときの気づき(手が麻痺して軸が細いペンを握れないから、軸を太くする)に近い感じです。まず、ペンを握れなくなった人を観察します。その人はお皿をつかむ時に手の平をお皿のふちに押しつけるという特徴的な動作をします。そこから発想を得て、お皿の形状を反映させたペンを作りました。
この話で一番重要なポイントは、障がいのある人と普通の人を比較検討することで、デザインを浮き上がらせることです。要は、ペンを握れなくなった人の知恵が重要なのです。そこから知恵を抽出してデザインとして生かせば、普通にペンを握れる人に対しても普遍的な価値が提供できるということなのです。ユニバーサルデザインに関しても、障がい者が普通の人のようにモノを使えるようにデザインするというのは古い考えなのでしょう。これからのユニバーサルデザインは、障がい者の特徴的性質から”知恵”を抽出し、普通の人にデザインを通じて還元することなのだと感じました。あと、印象に残っているのは、日本は文化という無形の資産を社会の中で価値づけられていないということです。文化という無形の資産をデザインに生かすことがこれから社会に出る人に期待したいことだとおっしゃられていました。

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