2010年5月5日水曜日

デザインコンセプト特別講義 4月28日 渡和由

  • 自己紹介
筑波大学の芸術系で准教授をしている。専門は環境デザイン。環境デザインはよくわからない分野。何をやるかはまだはっきりしていない。環境デザインは、プロダクトや建築、ランドスケープ、都市計画などを全て含んでいる。それをアメリカで8年間やってきた。環境デザイン的コンセプチャル・ワーク。今日お話しするのは、まだ日本では定着していないビジネスの話。 みなさんも理解して広めてほしい。

  • 真鶴小学校との景観教育活動
いろいろな繋がりで小学生を相手に、何かをやろうということになった。でも、なにをしたらいいかがわからなかった。小学生が主役、大学院生はサポート。小学生と大学院生それぞれ4名ずつでプロジェクトを実施した。今回のプロジェクトでは街の景観を意識すること。最終アウトプットは、雑誌をつくる。視覚的なメディアをつくろうということだけ、渡さんから提示した。1学期、2学期、3学期で何をするかということは大学院生が構成をつくった。ただ、何をするかということは決まっていない。4人いたので1人2案ずつ考えた。土曜日の総合学習でやった。全部で50時間をつかった。小学生相手のプレゼンでは、マンガっぽい表現を用いて、小学生に親しみを持ってもらえるようにした。大学院生は全員女性で身長が低く、小学生に親しみを持ってもらいやすかったと思う。
  • 1学期
クイズ形式のカードを自分たちで作り、それを友達の小学生に見せる。5月20日に探検。 先生がまなづるを10地域に分けた。子供たちが気にしていることやおもしろい場所を写真取ったりマッピングしたりする。小学生が考えている良い場所を選び、それを5つくらいに絞り、クイズ形式にまとめた。カードを見ながら、クイズになっている場所を探す(堀江注:オリエンテーリングみたいな感じかな)。小学生は第2ヒントくらいで答えに気づく。 発表会で大事なのは、コンセプチャルであること。小学生が考えたコンセプトは、大人に好評だった。小学生が考えた探検マップは、ある種の景観ポイントである。小学生が考えたキャッチコピーが1学期最大の成果だと考えている。6月13日の発表会。同じ説明をしなければならないが、小学生はだんだん慣れてくる。 基本的には、自分の言葉で説明する。
  • 2学期
小学生が大人にインタビューする。 真鶴町の景観をつくっていると思われる人を役所がピックアップし、その人に小学生がインタビューした。小学生では、ポイントを絞った質問が出来ないので、ヒントを与え誘導した。質問内容は、大人が考え、最後は小学生が自主的に質問させるようにした。インストラクションは大学院生が、写真で教える。最後はまとめをする。1学期と同じように視覚化する。先生のアイディアで劇仕立てでやる。活動の内容は、冊子にまとめたが、発言を並べるのではなく、マンガのように吹き出しに言葉を入れる感じでまとめた。劇を見た役場の人が泣いたりもしていた。
  • 3学期
3学期は、雑誌をつくる。大学院生がいくつかのモチーフを提示し、小学生に選んでもらった。小学生にも、挿絵を最低1つ以上描かせた。雑誌には、自分たちの描いた絵がちりばめられている。ゲラ刷りを見せて、小学生に感想を書かせる。真鶴bookをつくることで、自覚が持てた。冊子をつくることで、意欲がもてた。小学生に冊子を渡すと、自分の描いた絵だけではなく、全体の成果を見ていた。活動の最後に、大学院生が小学生に賞状をプレゼント。
  • まとめ
真鶴は景観意識が最も高い町。このプロジェクトがきっかけで、町の人の意識が変わったのではないかと思っている。見た目は、あえてださ目にした。もっとかっこ良くも出来たが、小学生がつくった感を出すためにあえて、ヘタウマ風にした。最後の方のマップで小学生の親が、この場所へ行ってみようかとなることもあった。大きなコンセプトとしては、景観の教育があって、町の人の意識を高められないかという問題意識があった。途中のプロセス全部が、コンセプトを支える重要な活動だった。1学期は楽しさ先行、2学期は社会科的意識、3学期はこれまでの活動の振り返り。キッズデザイン賞というところに申請した。アウトプット自体は大したことはないが、プロセスを評価してほしいと思い、キッズデザインへ出した。このプロジェクトは、単年度のものだったが、単発で終わらないように、次年度からも先生や町の人ができるかどうかも含めて、考えながら実行した。これはビジネスにはならないが、ためにはなる。それが町のためやコミュニティビジネスに発展する可能性はある。何らかのメディアをつくって行くということがビジネスになる。

  • サイトプランニング
人の居場所をつくるサイトプランニング(施設配置計画)。建築や都市計画では、人がどこでどういうことをするのかということを考えられていない。アメリカに行って、そのことに気がついた。インダストリアルデザインの会社で環境デザインのことをしていた。そういうところで働いていたので、人に近いことを考えられる環境にいた。1/2000のモデルに人の居場所をどう表現するのか。トランジット・モール地区での再開発例。シティプレス(ロングビーチ) 大型商業と駐車場を小型商業と集合住宅が囲う。ライナーショップ、列車型の店という手法を用いた。町並みもひとつながりの横長の建物なのだけど、縦に色で分割することで、多様な建物のインターフェイスをつくる。小さなお店をたくさん配置することで、早く通り過ぎることが出来ない。すぐに変化があり、飽きさせない町をつくるためにも、小さな間口をたくさんつくった。日本では、この手法は当たり前に使われているが、地方では衰退している。ジャスコでは、建物の内側に、いろんなお店を配置しているが、アメリカでは、その方法は用いられずに、外側にお店を配置することで、町の活性化に使われている。一階は、仕事場で、二階に住む。日本だとロフト形式。トランジット・モールは人が歩いて楽しめる町を目標にしている。ここのお店のインターフェイスも外にはみ出すようにしている。居場所づくりのための施設配置 1/2000と1/1を同時に考えることで、居場所の配置や心地よい場所をつくりだす。居場所の外在化。公共空間に私有空間をはみ出させる。渡さんはスタバをどこに配置したら良いかということもわかっている。どこにどんなお店を配置することが効果的かということはわかっている。駅前の道路にお店をはみ出させて、活気を演出する。アメリカの町では、役所が路上にイスとテーブルを置くことを推奨している。日本は住民の苦情によって、促進策がうまく機能しない。Google本社がある、マウンテンビューの例。市役所が規制を活性化策を仕掛けている。ファーマーズ・マーケットがつくる居場所 マルシェ。市役所の景観意識を高めることが、日本の景観を変えることにつながると考えて、行動している方だな。露天風呂に入っているような形式で、公園の景色を楽しむことができるカフェ。透明な町のインターフェイス。建築やランドスケープなどの人たちが協調している。個々のお店も、人のための居場所をつくる。スタバはその先駆け。サードプレイス。トップダウンとボトムアップの都市計画アプローチ。感染、インフェクション。いいことがあると感染してく。吉祥寺はそういう良い街。日本では、ミッドタウンの公園がいい場所。2121design sightの前で、公園に大量のベンチが仕掛けられている。全体のコンセプトと細部の小宣布とを関係者に知らせて行くことがこれからの課題である。それにはメディアが必要でなおかつ、絵だけではダメ。デザイナーの力が必要。それが良い町や良い地域を生み出して行く。

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